クローン病とは
クローン病 (くろーんびょう)
英:Crohn’s disease は、
全ての消化管に炎症や潰瘍が生じる可能性のある難病のことです。
英語名からCD (しーでぃー)と略されることも。
とはいっても、そんなに噛むような長さでもないので、喋る時にはわりとクローン病ってそのまま言うことの方が多いかな。
患者数は2017年時点で約4万人程。
近年増加の傾向にあるものの、同じ 炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎(UC)の約17万人と比べると、クローン病の方はぐっと人数が少なくなります。
病変の範囲が広い
潰瘍性大腸炎と違う点はいくつか挙げられますが、特にいえるのは炎症が生じる範囲の広さです。
潰瘍性大腸炎の範囲が大腸のみであるのに対し、クローン病の範囲は大腸を含む消化管全て。
食べ物が通る口の中、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門までの全てに炎症が生じる可能性があります。
身近な口内炎を想像すると分かりやすい
口の中の炎症、といえば口内炎がありますよね。
ひどくなると、赤く腫れた真ん中の所が白っぽくなってそこがすごい痛む!なんて事も。
その状態を「アフタ性口内炎」といいます。
あれも言ってしまえば、浅い潰瘍なんですよ。
「アフタ」とは、分かりやすく言えば小さく浅い潰瘍のこと。範囲が5~6mm以下のものを指し、それ以上の大きく深いものが「潰瘍」と呼ばれます。
口内炎だってめっちゃ痛むのに、それよりも深い潰瘍が消化管の、しかも広範囲にできるかもしれない、となったら……。
この病気の大変さ、深刻さが伝わってきます。
病変がおきやすい部位
炎症が起きるかもしれない範囲がとにかく広いので、病変の出方も多岐にわたります。
多くは、小腸、大腸、小腸と大腸の境目 (回盲部)、肛門周囲などに生じるようです。
分類は大きくわけて3つ
分類として「小腸型」「大腸型」「小腸・大腸型」などがあります。
割合としては「小腸・大腸型」が多い模様。
特に「大腸型」は 潰瘍性大腸炎との判別が付きづらく、できるだけ知識が豊富な医師による診察が望まれます。
初めは潰瘍性大腸炎と診断されたけど、後になって他の所にも病変がみられたのでクローン病に診断が変わった、なんてこともあるので……。
主な自覚症状
多くみられるのは腹痛と下痢。
その他に発熱、体重の減少、全身倦怠感、肛門病変、栄養障害などがあります。
血便もみられる事はありますが、潰瘍性大腸炎ほどはっきりとは出ない場合もあるようです。
栄養を摂りづらくなってしまうのは、栄養を吸収する役割を担う小腸にも炎症が生じてしまうからですね。
そして、クローン病になったことによる「合併症 (がっぺいしょう)」が生じる場合もあります。
このクローン病の合併症には、次項で扱う「病変の特徴」というものが大きく関わっています。
病変の特徴
以下の特徴から、潰瘍性大腸炎との違いがみてとれると思います。
潰瘍が深い ←ここ重要
腸の壁は、いくつかの層が重なってできています。
潰瘍性大腸炎が、比較的あさい粘膜層に びらんや潰瘍が形成されるのに対し、
クローン病の肉芽腫性 (にくげしゅせい) の炎症範囲は、粘膜層を含めた全ての層に及びます。
簡単にいうと、炎症がひどくなれば傷のダメージが深いので、穴があいてしまう可能性がある、ということです。
それからもうひとつ。
ケガをした時のことを思い返してみてほしいのですが、浅い傷は比較的きれいに治るのに対し、
深い傷は治ったあとも皮膚に跡が残ること、ありますよね。
傷が深いと、治っていく段階でどうしてもひきつれた感じが残ってしまったり、皮膚が厚くなってしまったり…。
これ、腸の中でも同じようなことが起きるんです。
何度も深い潰瘍ができて、治ってを繰り返した腸の壁は、やがてひきつれを起こしたり、厚くなったりして、その結果せまくなってしまうんですね。
この狭くなってしまうことを「狭窄 (きょうさく)」といいます。
クローン病の主な合併症の中のひとつです。
ちなみに、腸に穴があくのは「穿孔 (せんこう)」。これも合併症のひとつです。
そう、この「深い潰瘍」が、合併症の発症にも大きく関わっているんです。
炎症が落ち着いた状態 ――つまり寛解(かんかい)を維持するということは、患者自身の生活の質(QOL)に直結するだけでなく、
合併症を防ぐという観点からみても、とても大切な事なのだということが分かりますよね。
肛門病変が生じやすい
クローン病の方で肛門病変を生じる方は比較的おおいです。
クローン病の病変が肛門付近に発生したものを「 一次性病変 」。
そして一次性病変が原因でさらに生じた病変のことを「 二次性病変 」といいます。
例1)クローン病の炎症や潰瘍そのものが、肛門の近くにできちゃった! ⇒「一次性病変」
例2)深掘れ潰瘍が原因となって、痔瘻になってしまった! ⇒「二次性病変」
こんな感じの違いです。(伝わるだろうか…;)
そして、クローン病の症状とは全く関係なく起きた、通常の肛門病変のことは「 偶発性病変 」というそうで。
ただ、この偶発性病変という普通に起きうる肛門病変は、クローン病が原因で生じた肛門病変との区別がつきづらいという難点があるようです。
二次病変については、腸管合併症の記事で詳しく書いています。
クローン病の炎症や潰瘍が原因で起こりうる肛門病変の一覧
以下は一次病変についてです。
深掘れ潰瘍
前述した「深い潰瘍」というのは、もちろん肛門部にも生じえます。
これが原因となって、「狭窄」や「肛門周囲膿瘍」などの二次病変が引き起こされる可能性があります。
裂肛(れっこう)
いわゆる 切れ痔 のこと。
文字どおり、肛門の粘膜や皮膚などが裂けた状態のことです。字面こわいね……。
そして、切れ痔と聞いて「あーはいはいアレね」くらいに思った方は要注意。
コイツね、よく聞くものだからといってまじで安心はできないんですよ……。
クローン病の裂肛は炎症が原因ですから、けっこう難治化しやすいんです。
裂けた所に細菌感染が起きれば、そこから肛門周囲膿瘍へと発展してしまうかもしれません。
裂けて治ってを繰り返している内に粘膜が引きつれてしまい、肛門狭窄を引き起こす可能性もあります。
便が通らなくなるほど狭窄が進むと、拡張の処置や 場合によっては手術の適応になることもあるので、気を付けたいですね。
浮腫状皮垂(ふしゅじょうひすい)
肛門皮垂はスキンタグ、とも呼びます。
肛門付近にできた、皮膚のたるみのことです。ですから病気ではありません。
炎症や腫れが治った時にしぼんで出来る皮膚のたるみなので、これ自体に本来問題はないです。
一般的には、痔核の腫れや強くいきんだ事などが原因で生じますが、肛門粘膜にクローン病の炎症が発生して皮垂ができる場合があります。
皮垂自体に痛みはなく ぷにぷにとした突起のようなものですが、排便後の拭き過ぎなどの刺激により、
皮膚に痛みやかゆみ、肛門部の違和感を生じる場合があります。
その他 病理的にみられる病変の特徴
以下は患者自身が自覚できるものではなく、内視鏡などの検査をした時などにみられる特徴です。
飛び石状 病変
潰瘍性大腸炎の炎症が直腸から連続的に広がっていくのに対し、クローン病の炎症は非連続性で、とびとびに炎症が起こります。
縦走潰瘍 (じゅうそうかいよう)
文字通り縦方向に走る潰瘍のこと。この出方もクローン病の特徴。
前述したアフタ (小さい潰瘍)が縦列しているものや、潰瘍が深くなって縦走潰瘍となったものなどを指します。
敷石像 (しきいしぞう)
縦横に走る潰瘍と、潰瘍のない粘膜の浮腫みとで、腸の壁がでこぼこになってしまっている状態のこと。
名称は丸い石を敷き詰めたようにみえることから。
発症する年齢層と男女比
クローン病は10代~20代に好発するといわれています。
また、クローン病の男女比は 約 2:1と、男性の方が多くみられるようです。
病気の原因は?
まだはっきりとした原因は分かっていません。
免疫機能の異常、食生活の欧米化、遺伝的素因など、様々な要素が複雑に影響しあって発症するのではないかと考えられています。
原因不明、かつ長期的な治療が必要である事から、厚生労働省の指定する難病のひとつとなっています
治るの?
現時点での医学では、完治(と言い切ること)は難しいとされています。
症状には波があり、落ち着いている時のことを寛解期(かんかいき)、炎症がある時のことを再燃期(さいねんき)といいます。
症状が落ち着いている=寛解 (かんかい)
まだ原因が不明な以上、何をもって完治とするのかの定義が難しいこともあり、
長く症状が落ち着いている状態のことは、基本的には「症状が寛解(かんかい)している」と形容します。
クローン病は、栄養の吸収を担う小腸にも炎症が起きるので、栄養の摂取にも影響がでてきます。
ですから、食事の摂り方がとても重要です。
刺激物や脂質などの炎症を悪化させやすい食べ物を制限せざるを得ないこともありますが、
楽しい食事の時間を過ごすための試行錯誤を、皆さんしていらっしゃいます。
そこに周囲の人たちの理解も加わるなら、どんなに素敵なことでしょう。
適切な配慮は、患者当人はもちろん、関わっている周囲も含めた皆を、きっとあたたかい気持ちにしてくれるはずだと、私は思っています。
もしかしてこの病気かも…と思ったら
病院いくのは嫌だな~って思いますよね。そのお気持ち、痛いほど分かります……。
ですが、だからこそ!
できるだけ早くお近くのクリニック (診療所)にかかることを、私はおすすめしたいです。
かかる時は 消化器内科・胃腸科 を
お腹が痛むし腸が怪しいんじゃないか、と自覚している場合は、消化器内科や胃腸科を掲げてるクリニックを受診するのが良いです。
(テキトーな医師の所だと 診断つくまでにもズルズルと長引く場合があるので、病院えらびは慎重に!)
炎症があるかどうかは 採血の数値である程度分かるので、できれば血液検査をしてくれる所が望ましいですね。
採血してもらえないか聞いてみるのはとても有効な手段です。
なかには肛門科にかかった事でクローン病と発覚することも
「おしりの調子が悪いなぁ……」と感じたので肛門科にかかったら、その肛門病変の原因がクローン病だった!
なんていう風に、肛門病変がきっかけで発覚する、なんてケースも結構あるんですよ。