こんにちは、星谷です。
クローン病で起こりうる合併症には、「腸管合併症」と「腸管外合併症」があります。
腸で起こるのか、それ以外の所で起こるのかの違いですね。
このページでは、その内の「腸管合併症」についてまとめています。
合併症そのものの意味については、下記をご覧ください。
https://ibd-life.com/about-complication/
腸管合併症
クローン病の症状が原因で 腸に起こる可能性のある病気・症状です。
なりやすいものとしては、肛門病変・狭窄・穿孔が多いようです。
狭窄(きょうさく)
炎症の回復と悪化を繰り返していると、腸の壁が狭くなってしまうことがあります。
狭くなると、本来通るはずのものも 通りにくくなってしまいますよね。
狭窄がひどくなると腸閉塞を起こすため、決して軽視できない症状です。
術後に起こりうる 狭窄
消化管の手術をしたあと、その手術をして縫った所 (=吻合部 ふんごうぶ) が狭くなってしまうことがあります。
こちらも同様に、ひどくなれば腸閉塞を起こしてしまいます。
腸閉塞(ちょうへいそく)
狭窄がひどくなると腸閉塞を起こすことがあります。腸閉塞はイレウスとも呼ばれます。
腸がねじれてしまったり狭くなってしまったりする事によって食べたものが通過できず、詰まってしまう状態のことをいいます。
これはたいへん危険な状態です。
お腹が張り、吐き気、おう吐、腹痛などが生じる他に、便やガスが出なくなることもあります。
ごく軽度であれば、絶食したりお腹を温めたりするなどして改善できる場合もあるようですが、
ひどくなれば 鼻からチューブを挿して溜まっているものを吸引する等の処置が必要となります。
術後に起こりうる 腸閉塞
術後の腸閉塞には、麻酔などによって腸の動きが鈍くなっていることによって起こるものと、癒着 (ゆちゃく) が原因となって起こるものがあります。
癒着とは、腸 と 腸 や、腸 と 創部 などがくっついてしまうことです。
術後、はやくに離床 (りしょう)して歩くように言われるのは腸閉塞を防ぐためなんですね。
穿孔 (せんこう)
臓器などに穴があいてしまうことです。
クローン病の炎症は、腸の筋層にまで達するような深い潰瘍が特徴なので、それが原因となって腸の壁に穴があいてしまう可能性があります。
仮に穴があいてしまった場合、それ自体が激しい痛みを伴うものであり、
そこから腸内のものが腹腔内に漏れ出てしまえば、腹膜炎を生じる危険性があります。
瘻孔 (ろうこう)
穿孔 は穴があいている状態そのものを指しますが、 瘻孔 は穴があいた所から別の場所へと、トンネルのように通り道ができている状態を指します。
トンネル自体が 瘻孔 というわけですね。本来通じないはずの A と B が繋がってしまったイメージです。
クローン病では、直腸などから穴があき、お尻の表面へと通り道ができてしまう 痔瘻 (じろう) が多くみられます。(下の肛門病変の図を参照)
内瘻 (ないろう)・外瘻 (がいろう)
腸管 と 腸管 、または 腸管 と 他の臓器 との間に通り道ができてしまうことを内瘻。
腸管 と 皮膚 などの体の外へと通り道ができてしまうことを外瘻といいます。
膿瘍(のうよう)
膿 (うみ) が溜まっている状態のこと。細菌感染などにより生じます。
クローン病では、肛門周囲膿瘍 (こうもんしゅうい のうよう) を発症することが多いです。
肛門病変(こうもんびょうへん)
肛門またはその周囲に生じる病変のことです。
クローン病では合併症として 肛門病変 が生じる事が多く、難治化しやすいです。
クローン病の肛門病変には「一次性病変」「二次性病変」「偶発性病変」がありますが、
下記の症状はその内の「二次性病変」にあたります。
肛門周囲膿瘍(こうもんしゅうい のうよう)
膿瘍の項でちらっと言いましたが、肛門の周辺で細菌感染を起こして膿がたまってしまっている状態のことです。
ちなみに、私はこれに何度も苦しめられました…。
膿が溜まっていると、眠れないほどの激しい痛みと高熱を伴います。
お尻の表面に近い所にできた膿瘍であれば、触れるとぷよぷよと熱を持って腫れている事が分かるでしょう。
溜まった膿は体外に出ようと どんどん表面の方におりて(?)くるので、
自然にお尻の表面や肛門内に破れて膿が出てきてしまうか、病院で皮膚を切開してもらって排膿するかの2通りになります。
膿を出さない限り 鎮痛剤も抗生物質もまず効いてくれません。
しかし、膿が出てしまえば驚くほど楽になり、薬も効くようになるので、とにかく早く膿を出すことが先決です。
何もしてなくても常に激しい痛みが襲ってくる上に、
膿が溜まった状態が続けば 更に別の所へと広がる危険性もあるので、我慢していても良いことはないです。
ちなみに、もし自然に排膿されたとしても、「楽になったから病院はいいや」なんて思っていると、後々悲惨なことになるので受診しましょうね!
痔瘻(じろう)
肛門周囲膿瘍を発症したら、自然に破れるか切開処置してもらうかして、膿が外にでますよね。
そうすると、大体この痔瘻になります。
痔瘻は瘻孔のひとつ。つまり、膿が溜まった所から膿が出る所へと 通り道ができている状態なんですね。
破れた or 切開した所からは、膿や浸出液がちょろちょろと出続けている感じになります。
この一度できた通り道は、ほとんどの場合 自然に塞がることはありません。(まれに塞がる場合もあります)
基本的に痔瘻の通り道を治す方法としては、外科的手術しかありません。
お尻の表面に近い方が「浅い」、腰やお腹の方に近づくほど「深い」と表現しますが、深部の痔瘻ほど手術の難度は高くなります。
また、通り道がいくつも出来たり、枝分かれしたようになったものを 複雑痔瘻 といいます。
深く複雑なものほど治療が難しく、再発率も上がります。
特に IBDにおける痔瘻は炎症が原因となって起こることが多いので、上記のような厄介なものになりがちです。
一般的な痔瘻と同じ治療の仕方では、かえって炎症を悪化させてしまう場合もあるので、
シートンドレナージ法などの術式が適応されることが多いです。
痔瘻の手術については、またそのうち記事にできればなと思っています。
ざっと挙げてみましたが…
腸管だけでこんなにあんのかよ…長えよ……と思われたかもしれませんね (苦笑)
ゲームで例えるのもなんですが、
ドラクエの [ メラ ] → [ メラミ ]
FFの [ ブリザド ] → [ ブリザラ ]
みたいな、
威力が 小・中・大 と発展する系の呪文や魔法をイメージしてもらえると分かりやすいかな と思います。
[ 肛門周囲膿瘍 ] → [ 痔瘻 ]
[ 狭窄 ] → [ 腸閉塞 ]
とかね。
これらの合併症って、どれも 元の炎症や潰瘍があって、そこから発展したものなんですよね。
ごくシンプルにいえば、炎症を抑えることが出来れば、これらの合併症の予防にも繋がると思うんです。
その炎症を抑えるのに苦労してんでしょーが!って話ですが (苦笑)
治療法も 合う合わないは人によって全く違うので、自分に合った方法を見つけるのが大切になってきますよね。